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1.乳歯のお話

赤ちゃんの口の中に小さな乳歯が見えた日は、わが子の成長を実感させられる時ではないでしょうか?

乳歯は生後6~9ヶ月頃から生え始める赤ちゃんの歯です。全部で20本あり、3歳ぐらいまでに生え揃います。生え代わりは6歳頃からですが、一番遅くに抜ける歯は小学校の高学年頃なので、意外と長く使うものです。しかし歯の生え始めや、生え代わりの時期には個人差があるので、人より遅いからと言ってそれほど気にすることはありません。

永久歯と比べてエナメル質や象牙質が薄く柔らかいので、青白く見え、虫歯になりやすい性質があります。

どうせ生え代わるから、虫歯になっても大丈夫と思っていませんか?それは大きな間違いなのです。

乳歯の下の骨の中には永久歯があるので、乳歯に大きな虫歯があると永久歯にも虫歯菌がうつることがあります。虫歯になるとよく噛めないので顎が十分に成長せず歯並びにも影響します。また硬いものを嫌うなど偏食の原因にもなります。乳歯がしっかりそろって噛めることは、子供の発育に必要な栄養をきちんと取るためにも大切なことなのです。

乳歯の健康が永久歯の未来を左右すると言っても過言ではありません。大切な歯を虫歯から守るため、しっかり歯磨きをして、歯医者さんでフッ素を塗ってもらうといいでしょう。虫歯は小さいほうが治療が簡単です。早期発見のため定期検査をおすすめします。

2.知覚過敏

知覚過敏とは、虫歯がないのに冷たいものがしみたり、歯ブラシなどの刺激で、歯に痛みが出ることを言います。

なぜこうしたことが起きるのでしょうか?

歯は、口の中に見えている部分(歯冠部)と骨の中に埋まっている部分(歯根部)に分かれています。

歯冠部はエナメル質と言う硬い組織に覆われているのでしみませんが、歯根部はエナメル質がないため、根の部分が露出すると様々な刺激が歯の神経に伝わり、しみたり、痛みがでます。

歯根部が露出しても、必ずしも知覚過敏がおきるわけではなく、歯の根の部分が汚れていたり、間違った歯磨きによって歯がすり減ったり、歯茎が下がってしまうと発症することが多いようです。

知覚過敏の場合、少ししみるからといって神経質になる必要はありません。歯の神経には、自分の力で刺激を受けにくくするシステムがあり、自然治癒が期待できます。また歯医者さんで、知覚過敏の薬を塗ってもらったり、露出した歯根の表面をコーティングしてもらうのも効果的です。まれに痛みが強く、治療しても症状が改善しない場合、歯の神経を取ることもあります。

知覚過敏かなと思ったら、まず歯医者さんに相談することが大切です。なぜなら、虫歯や歯周病のため、しみたり痛みが出ている可能性もあるからです。痛みがある場合は、早めに診察を受けましょう。

3.睡眠時無呼吸症候群

眠時無呼吸症候睡群とは、「一晩7時間睡眠中に10秒以上の呼吸停止が30回以上認められるか、あるいは1時間あたりの睡眠中に5回以上呼吸停止があるもの」とされています。

おもに昼間の眠気やいびきなどの症状があり、特に呼吸の止まるいびきは要注意です。

重症の方は心臓病、脳卒中、交通事故などのリスクが高まるというデーターもあります。

肥満は原因の一つではありますが、痩せていても顎が小さいことで、発症している方も多くいらっしゃるようです。

治療としては、まずダイエットやアルコールの制限、禁煙など生活習慣の改善をおこないます。内科的には寝ている時に鼻にマスクを着けて鼻から気道に送り込む治療、外科的には扁桃や口蓋垂(のどちんこ)を切る治療があります。これらの治療は内科や耳鼻科で受けられます。

歯医者さんがかかわる治療としては、ナイトガードやサイレンサーと呼ばれる特殊なマウスピースをはめてふさがった気道を広げる方法があります。ただし、義歯や重度の歯周病、顎関節症などの方はマウスピースを作れない場合があり、また重症の方にはあまり効果がないと言われています。

2004年から健康保険に取り入れられましたが、医師の診断がついている場合に限られます。マウスピース治療をご希望の方は、かかりつけのお医者さんに相談し、紹介状をお持ちの上、歯医者さんを受診しましょう。

4.マウスガード

マウスガードとはマウスピースとも言い、スポーツをする際に起きるケガを予防して、スポーツを安全に楽しんでもらうために使うものです。

その効果としては、歯の破折や脱臼、口の中や口唇などの外傷の予防だけではなく、脳震とうの発生率を低減させたり、顎関節を保護する効果もあります。そのため、格闘技だけではなく、ラグビーやアメリカンフットボール、バスケットボールなどの球技でも広く使われています。また人によっては歯のくいしばり効果により運動能力が向上する場合もあるようです。

マウスガードには市販品と歯医者さんで作ってもらうオーダーメイド品があります。

市販品は比較的価格が安く、スポーツショップやインターネットなどで手に入れられます。熱湯につけて柔らかくしてから自分で形を整え、その後冷水に浸け固定するタイプが一般的です。しかし装着感が悪く、かみ合わせを考慮していないため顎関節を悪くする場合があります。また装着したまましゃべりにくく、そのことがスポーツをする上で意外に障害になるようです。

オーダーメイド品は価格が高いですが、歯医者さんが作るため適合が良く市販品の欠点が大きく改善されています。その保護能力は市販品の10倍程度とも言われています。また色々なカラーを選べて、ネームや、ロゴ、背番号を入れることも出来ます。

興味のある方は歯医者さんにご相談下さい。

5.フッ素ってな~に?

フッ素は自然界では特に珍しいものではなく、お茶など様々な食品にも含まれています。

フッ素を塗ることによって、歯の質を硬くすることができ、初期虫歯であれば、再石灰化といって、元に戻す力があります。

しかしフッ素を塗ったからといって、虫歯にならないわけではありません。きちんと歯磨きをしなければ、やはり虫歯になってしまうのです。フッ素はあくまでも補助的なもので、虫歯予防で一番大切なのは、歯磨きなのです。

それでは実際にフッ素予防するにはどうしたら良いのでしょうか?

大きく分けて家庭で予防する方法と、歯医者さんで予防してもらう方法の二種類あります。

家庭でのフッ素には、フッ素入りの歯磨き粉、フッ素ジェル、フッ素洗口剤、フッ素スプレーなどがあります。

フッ素入りの歯磨き粉はコンビニやスーパーなど、どこでも手に入ります。あとの3つは薬局で買うことができます。

これらの特徴は濃度が薄く、毎日使わなければ効果がありません。それに対して、歯医者さんで塗ってもらうフッ素は濃度が高く、年2~3回塗れば十分に効果があります。

フッ素はたくさん塗ったからといって、より効果があるわけではなく、ある程度硬くなったらそれ以上は必要ありません。そればかりかかえって害になる事もあります。

どの方法が良いのか、歯医者さんに相談すると良いでしょう。

6.電動歯ブラシの選び方

「電動歯ブラシと普通の歯ブラシではどちらがいいのですか?」と最近良く聞かれます。

同じ質問を学生の頃恩師にしたところ「君は若いのだから電動歯ブラシは贅沢です。年をとり、手が不自由になったら使いなさい」と言われました。

たしかに、歯ブラシでも十分虫歯予防はできるのだから、電動歯ブラシは贅沢品といえるでしょう。とはいえ電動歯ブラシのほうが効率的に汚れを落とすことができるのですから、今回はその選び方を説明します。

電動歯ブラシ選びは掃除機選びに似ています。どれほど高価な掃除機でも物も動かさず、漫然と掃除をしていてはきれいになりません。逆に安い掃除機でも、家具を動かし隅々まで掃除すればきれいになります。すなわち使い方なのです。電動歯ブラシも歯の隅々までヘッドの部分を行き渡らせなければ、意味がありません。そのためにはヘッドの部分が小さい物を選びましょう。またその部分は消耗品なので、安くこまめに交換できる物が良いでしょう。劣化した物ではその性能を十分発揮することが出来ません。年数が経ち消耗品が簡単に手に入らなくなるのも困ります。アフターサービスの良いメーカーの物が良いでしょう。

しかしどんなに高性能でも、歯と歯の間を十分きれいにするのは困難です。糸ようじや歯間ブラシといった補助器具は必ず使うようにしましょう。

7.シーラント(予防充填)てな~に?

シーラント(予防充填)と言う言葉を聞いたことがありますか?

むし歯には三大好発部位と言って、むし歯になりやすい場所が3か所あります。一つ目が歯の溝、二つ目が歯と歯の間、三つ目が歯と歯茎の境目です。シーラントとはそのうちの歯の溝からできるむし歯を予防します。レジンと呼ばれるプラスチックで歯の溝を埋めて、溝からのむし歯を予防するのです。6歳頃に生えてくる、6歳臼歯と呼ばれる永久歯に施されることが多く、特に生えたばかりの6歳臼歯はむし歯になりやすいので、早めの処置がおススメです。

ところで具体的にどんな処置を行うと思いますか?

まずブラシや超音波洗浄などで、歯の表面の汚れをきれいに落とします。歯は削らないので痛くありません。その後、特殊な薬を塗り水で洗い、シーラントがくっつきやすいように歯の表面処理をします。最後に溝にレジンを流して光を照射し固めてから、かみ合わせをチェックします。10分程度で出来る簡単な処置です。

ただしあくまでも歯の溝からのむし歯の予防なので、他の部位には効果ありません。また、しっかり歯ブラシをしないと、シーラントの継ぎ目からむし歯になる場合もあるので注意が必要です。

生えたばかりの永久歯に対するシーラント処置は、健康保険が適応されます。興味のある方は歯医者さんに問い合わせ下さい。

8.キシリトールの話

キシリトールには「なんだか歯に良さそう」と言うイメージがあると思いますが、具体的にどのような効果があるかご存知ですか?

キシリトールは糖アルコールの一種で、その仲間にはソルビトールやマルチトールなどがあり、甘味があるため砂糖に代わる代用甘味料として使われています。

むし歯菌は砂糖が大好きで、砂糖をたくさん食べると酸を出し、歯を溶かし穴を開けてむし歯をつくります。糖アルコールは砂糖と違いたくさん食べてもむし歯菌は酸をあまりつくることが出来ません。そのためむし歯になりにくい性質があります。

糖アルコールのなかでもキシリトールは特に優れていて、むし歯菌の増殖を防いだり、再石灰化と言ってむし歯菌によって溶かされた箇所を硬くさせる作用があります。

ではどのくらい摂取したら良いのでしょうか?

LOTTEのホームページを見ると1回2粒を5分噛み、1日7回を目安に摂取することを推奨しています。家族全員で噛むと結構コストがかかりますね。

フッ素と異なり、高コストで噛んでいる時間も長いことから、予防のために導入するのは難しいと思います。

また残念ながらキシリトールだけではむし歯の予防はできません。キシリトールはあくまでも補助的なもので、むし歯予防で一番大切な事はやはり毎日の歯磨きです。

予防のためではなくもっと気軽に、普段噛んでいるガムをキシリトール入りに代えてみてはいかがですか。

9.親知らずとは?

親知らずは、正式には第三大臼歯といい、人の歯で、一番最後に生えてくる歯のことです。

萌出時期が20歳前後と遅く、親から独立していて、親が知らないうちに生えてくるため、親知らずと呼ばれるようです。

全員、生えてくるわけではありません。先天的に無い人もいます。

現代人はあごが小さいため、一番奥に生えてくる親知らずは、生える場所が十分に確保できず、しばしば斜めや横に生えてきたり、骨の中に埋まって出てこなかったりします。

このため、不潔になりやすく、しばしば虫歯をつくったり、歯ぐきに炎症をおこしたりします。また、その手前の歯も虫歯や歯周病になる可能性が高まります。

きちんと生えてない場合は抜歯したほうが良いでしょう。

ただし例外的に、あごが大きい人で歯が真っ直ぐ生えていて、上下が咬んでいる場合や、ブリッジや入れ歯の土台として使えそうなものは抜く必要はありません。

親知らずの抜歯は困難なものが多く、口腔外科の専門病院でなければ抜けない場合があります。またあまりにも腫れている時は、腫れが引くまで抜くことができません。そのため何ともない時に抜いておくことをお勧めします。

自覚症状がなく、まったく生えてこない場合でも、骨の中に埋まっていて、悪さをすることもあるので、ご自分の親知らずがどうなっているか、歯医者さんに診てもらうといいでしょう。

10.歯を失う原因第1位は?

みなさんは、歯を失う原因の第1位がなんだかご存じですか?8020推進財団のH17年の調査によると、第1位が歯周病で41.8%第2位が虫歯で32.4%となっています。虫歯が第1位じゃないのはなんだか意外ですね。ちなみに第3位は歯の破折の11.4%だそうです。

第1位となった歯周病は、初期のころは自覚症状がなく、腫れや痛みなどの症状がでてくるのはかなり進行してからです。また虫歯のように1本ずつ悪くなるのではなく、全体的に進行する為、いっぺんに複数の歯を失う場合があることなどが、第1位なった理由ではないでしょうか。

ところでみなさんは、歯周病は口の中だけの病気と軽く考えてはいませんか?最近の研究では歯周病は重症になると、心臓疾患や脳血管疾患、糖尿病など全身にも影響を及ぼすことが分かってきています。歯周病を予防することが、全身の生活習慣病の改善にもつながるのです。8020運動、すなわち80歳になっても自分の歯を20本以上保ち健康でいるためにも、「歯を失う原因第1位」の歯周病を予防することが大切です。

歯周病の原因は歯に付いた歯垢(プラーク)や歯石です。これらを毎日の歯磨きや、歯医者さんでのクリーニングで除去することで多くの歯周病は予防できます。定期的な歯科検診や歯医者さんでのクリーニングをおすすめします。

11.一番良い歯

以前患者さんから、一番良い歯を入れてくれと言われ困ったことがあります。と言うのも入れ歯や差し歯の治療で、値段の高い歯はありますが、一番良い歯はないからです。

入れ歯の治療で一番高い治療のひとつに金属床義歯があります。入れ歯が粘膜に触れる部分を金属にしたものです。すべてプラスチィクで作った入れ歯にくらべ、丈夫で、薄く加工できるため違和感が少なくとても良いものですが、入れ歯が壊れた時や、アゴが痩せてしまって合わなくなった時の修理が困難であると言う欠点があります。また金属アレルギーの方には使えません。

差し歯の一番高い治療のひとつにオールセラミックがあります。すべて陶器で作られた差し歯でほとんど自分の歯と見分けがつかないぐらいきれいに加工できるので、多くの芸能人が入れているようです。また金属を使わないので、金属アレルギーの方には最適な材料です。しかしすべて陶器であるため割れやすく、金属のように薄く加工できないので、歯をたくさん削る必要があるといった欠点があります。

このようにどんなに高価な治療でも必ず欠点があり、いまの歯科の技術では、欠点のない一番良い歯はないのです。

保険の歯にしろ、自費の高価な歯にしろ、それぞれ利点と欠点があるので、歯医者さんと相談してそれぞれの特徴を説明してもらってから、どのような歯を入れるか考えたら良いかと思います。

12.歯の神経について

皆さんは歯の神経を取る治療を受けたことがありますか?歯が痛くて我慢できない程痛みが強い時、歯の神経を取る治療を行う場合があります。

歯の中には、歯髄と呼ばれる神経と血管の集まった組織があり、歯の神経を取ることとは、歯髄を取る事を意味します。歯髄は歯に栄養を供給する大切な組織です。歯髄を取ってしまうと歯は脆くなり変色してきます。「痛い」とか「しみる」といった自覚症状がなくなるため、治療後、再びむし歯になった場合、かなり悪化しないと気が付かないことが多く、再治療が困難になります。このため歯髄は出来る限り取らないほうが、歯の健康を保つためにも良いことです。

しかし、むし歯が大きくなったため、むし歯菌が歯髄に入ると、歯髄は炎症を起こし強い痛みを感じるようになります。ほとんどの場合、歯髄を取らなければ痛みは治りません。また放置すると歯髄が壊死し、顎の骨までむし歯菌が達し膿がたまり、より重篤な症状をひきおこすので、悪くなった歯髄はしっかり取り除く必要があります。

一般に歯髄を取る治療の成功率は90%程度と言われています。100%ではないのでなるべく歯髄は取らないで治療を済ませたいものですね。そのためにも、むし歯が大きくなり痛みが出る前に歯医者さんで治してもらうことが大切です。歯の定期健診を受けて、むし歯がまだ小さいうちにしっかりと治しましょう。

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